『ラン活』ーー
小学校入学を控えたお子さんの保護者が、ランドセルを選んで購入するまでの一連の活動を「ラン活」というそうです。ランドセルの多様化や人気製品が早めに完売してしまうためにできるだけ早めに情報収集、試着したりするという。
私が子供の時はラン活などはなく、なんとなく親戚にもらったランドセルを何も考えずに背負っていました。
我が子も来年小学生。
本人はそこまでランドセルにこだわりはない模様。親としては軽い方がいいんだろね、くらいでなんでもいいやと思いつつも、今のランドセルってどんもんか?興味本位で調べ始めると、いつしか自分自身も「細かい部分」や「質感」に目がいくようになっていきました。
そうなると、それなりにラン活です。大型スーパーで販売されるランドセルから、革職人さんが手がけるランドセルまで、見に行ったり、背負わせたり。
そして、毎日背負うものだからこそ、できるだけシンプルで、ヘンな?装飾もなく、『静かな存在感』と『お気に入り』の部分があるランドセルがいいなちと行き着いたのが、セイバンの新ブランド「+cel(セル)」でした。
+cel(セル)
+celは、ランドセルメーカーとして老舗であるセイバンが立ち上げた新しいブランド。

特徴としては、セイバンを表に出さずに、母体とは別に新しい視点でマーケットを定めて、プロダクトデザイナーやアーティストと協業していること。
個人的な感想は、『クラフト感を出張しすぎず、ちゃんとしていて、可愛い。』
プロダクトデザイナー柴田文江氏が手がけたランドセルは、スタンダードなモデルの〈ARTISAN〉と革新的なモデルの〈NOBLE〉の2つ。

〈ARTISAN〉は、「職人」という意味の名の通り、+CELの技術を結集したモデルで、オーセンティックなランドセルの形状をしていますが、専用のボトルケースをサイドに配した他、ステッチをデザインとして捉え直すなど、新鮮な印象。

〈NOBLE〉は、蓋である「かぶせ」がなく軽量で機能的。いままでにないランドセルですが、見た目はちゃんとランドセル。
美しく、そしてとにかく機能的なのは、さすが私のデザインヒーローのひとり、柴田文江。

そして、もう一つのラインナップ、<PLAIN>。もっともスタンダードで、クラシカルで、無駄な機能を削ぎ落としたランドセルです。蓋である「かぶせ」の裏には、民芸運動の旗手・染色家で、昨年亡くなられた柚木沙弥郎の作品があしらわれています。
+cel home store
実際にそれらのランドセルに触れたくなり、青山にある+cel home storeを訪ねました。
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目22−2
営業時間:10:00-18:00
定休日:月曜日・火曜日
tel:03-6455-4225


+cel home storeの空間デザインを手がけたのは、アパレルブランドYAECAの服部哲弘さん。余白を生かした穏やかな設えは、ランドセルを単なる学用品としてではなく「子どもの日常に寄り添う美しい道具」として提示しています。
完全予約制の空間は非常に心地よく、ランドセルを試着しながら、子どもの背中にどう映えるのかをじっくり確かめることができます。
親切に丁寧にご案内頂き、最初は緊張気味の子供も安心したようで、気になるランドセルをいくつか背負っていました。最終的に選んだのは、<PLAIN>。



柚木沙弥郎さんの作品も気に入ったようで。

子どもの日常に、どんなものを選び託すか。
人生に大きな影響を与えるであろう六年間を共に過ごすランドセルに、デザインやアートが息づいていることは、きっと豊かです。
やっぱり、日々の道具にアートを溶け込ませるっていいね。
そういえば、セイバンといえば、以前「村田モノゴト」でも彼らのバックブランド「monolith」について書いたことがありました。機能と造形を研ぎ澄ませたmonolithの姿勢は、ビジネスパーソン向けの鞄に新しい選択肢を提示しています。

老舗の新しい挑戦は、気持ちがいいものです。
コメント